2025.02.24

【極めのいち素材】第107回 第1位 吉比産業株式会社 東京支店(前編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第107回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。

【第1位】
吉比産業株式会社 東京支店
品 名:ラムグローブ仕立て
<コメント>
大きさと厚みがあり、肌感触がソフトな羊毛を採るのに適しているウールシープを使用しております。 野球のグローブ革特有の跳ね返りのある弾力性と羊革の持つ優しさを兼ね備えた、今までではあり得なかった素敵な革の誕生です。皆さんで祝ってください。
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創業から140年以上の歴史を持つ吉比産業株式会社では、タンナーとメーカー、職人とデザイナー、そして、人と自然など、長年に渡り革にまつわる橋渡しを担ってきました。
革のはじまりから終わりまでを知ることで、デザイナーさんだけでなく、実際に革製品を手に取る消費者の方に寄り添った革の提案も行えます。そんな同社が、今回、ミラクルな出会いで生まれた『ラムグローブ仕立て』の総合監修 岩本佳晴氏にお話を伺うことができました。

―この素材の特徴をお聞かせください。

この『ラムグローブ仕立て』は野球のグローブを作っているタンナーさんに依頼したレザーになります。グローブというと普通は牛革で作られているのですが、そのタンナーさんの手法を使ってラムを使ったらどうなるだろうか?という思いから、挑戦をしてみました。
ソフトレザーを作る手法は昔からありますし、今でもいろんなタンナーさんが日進月歩で開発されていますが、普通にソフトレザーを作った場合、手触りがネットリとした質感になります。ですが、このタンナーさんの手法で作ってみるともう少しプリっとしたイメージと言いますか、膨らみを持たせたようなタッチ感を表現でき、今までとはひと味違う艶やかなレザーに仕上がったと思っています。また、一般的な革は芯通しすることが多く、革の繊維を壊してしまうので、どんなにソフトで手触りが良くても形を保ちにくいという特徴もでてきます。その点、グローブの革は芯通しをしないので、ソフトなタッチ感を保ちつつ革本来の弾力性も兼ね備えているため、形が崩れずに加工を行うことができます。

独特なタッチ感の『ラムグローブ仕立て』

―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。

グローブを専門でやられているタンナーさんは、我々皮革業界の中でも少し特殊で通常のタンナーとは別世界の位置付けになります。普通の仕事の中ではなかなか出会うこともありませんし、極めのいち素材のような特異な依頼のご協力を得ることも難しいのですが、今回たまたま原料を仕入れている方にグローブのタンナーさんのお話を伺う機会があり、人づてではありますが、この革をお願いする機会をいただくことができました。

―出来上がった素材は想像していた通りのものでしたか?

想像通りのものができたと思っています。私たちは革づくりの際、想像以上のものを想定して革づくりをしていますので、このようなチャレンジも10割が成功するわけではありませんが、幅広く経験していると6〜7割は、まあまあ成功できると言えます。そうじゃないとそもそもチャレンジ自体できませんからね・・(笑)。

(後編につづく)

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各団体・企業情報はこちらから。

吉比産業株式会社 東京支店(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kibi-tokyo/
吉比産業株式会社 東京支店(公式サイト):http://www.kibi-1882.co.jp/