イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第105回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ)
【第1位】
吉比産業株式会社 東京支店
品 名:ラムグローブ仕立て
<コメント>
大きさと厚みがあり、肌感触がソフトな羊毛を採るのに適しているウールシープを使用しております。 野球のグローブ革特有の跳ね返りのある弾力性と羊革の持つ優しさを兼ね備えた、今までではあり得なかった素敵な革の誕生です。皆さんで祝ってください。
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創業から140年以上の歴史を持つ吉比産業株式会社では、タンナーとメーカー、職人とデザイナー、そして、人と自然など、長年に渡り革にまつわる橋渡しを担ってきました。
革のはじまりから終わりまでを知ることで、デザイナーさんだけでなく、実際に革製品を手に取る消費者の方に寄り添った革の提案も行えます。そんな同社が、今回、ミラクルな出会いで生まれた『ラムグローブ仕立て』の総合監修 岩本佳晴氏にお話を伺うことができました。
続いては後編です。
―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?
この革の反応を知りたかったので、先日、イタリアのリネアペッレで出展している、仲の良いインドのタンナーさんに頼んでこの革を展示してもらったのですが、海外での反応はかなりよかったみたいですね。
やはり世界に通用する日本の革といえば、このようなソフトレザーが強みになりますので、日本らしさという点ではかなり良い革が仕上がったと思っております。ただ、単価がどうしても上がってしまうため、世界では特に市場に乗せるのが難しい革にはなってくるでしょうね。
―国内でも価格的には市場に乗せるには難しいですか?
国内であればさほど難しくないと思っています。もちろん安くはないですが、この厚さと大判のラムレザーというだけでも十分スペックが高い商品になりますので、汎用性も高く使いやすい革だと言えます。また、安定供給の市場ばかりだと私はつまらないと思っているので、「こういうのがあるよ・・」と話のネタになるような革があると新しいビジネスチャンスも生まれますし、何より私自身がそういうのが好きなだけです(笑)。弊社に来られるお客さんも良く「変なのない?」と言って来られることがあるんですよ(笑)。
―今年3月にレザーの定義がJISで制定された件についてどう思われますか?
あくまで私個人的な意見にはなってしまいますが、もともとフェイクレザーに対してそこまで反対意見を持っているわけではありません。技術の向上と共にフェイクレザーも品質が高くなっているのは確かですが、いくら品質が良いと言ってもレザーになれるわけではありませんし、レザーとフェイクレザーの間には越えられない壁があることは、昔から分かっていたことなので、JIS制定に関して「よかったな・・」とか「安心した・・」などの意見は持ち合わせておりません。
製品化を考える上で全てレザーにする必要はなく、あくまでその製品に合った素材を選ぶことが大切です。フェイクにはフェイクの良さがあったりしますし、普通に綿などの生地が良い場合は綿を使って良いと思っています。
我々がどうこうというより優先されるべきは、作り手さんが考えて素材を使い、消費者が好んで選ぶことだと思っています。とはいえ、中にはレザーと間違って購入される方もいらっしゃるかもしれないので、それを抑制する上では良いことだとは思っています。
―皮革業界として「今、何を為すべきか?」など、ご意見ありますか?
今の皮革業界では、企画をやる人がなかなか育たない環境だなと思っています。勉強する時間もありませんし、そういった場所もない状況です。革を使われる方は、企画が入り口になりますので、その企画をやる人が育たないとなると入り口自体閉じてしまうことになります。どうせなら人材を育てる環境づくりに注力するべきなのではと思っています。
― 来場者の方々へメッセージをお願いします。
私たちはいつも少しでも革に興味を持っていただけるようなブースの配置を考えております。革に興味を持ち始めた方やコアな方にも楽しんでいただけるような革を取り揃えていますし、中にはわかる人にはわかるような面白い革などもあり、遊び心を取り入れた見せ方をしています。ぜひ一度足をお運びください。
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各団体・企業情報はこちらから。
吉比産業株式会社 東京支店(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kibi-tokyo/
吉比産業株式会社 東京支店(公式サイト):http://www.kibi-1882.co.jp/