2025.06.30

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【極めのいち素材】第108回 第1位 株式会社 寿屋(前編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第108回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。

【第1位】
株式会社 寿屋
品 名:KARUI
<コメント>
今、軽いのが売れてるの知ってます? 厚み0.3~0.4mmと軽さを追求。
川西鞣しでしかできないソフトさと素上げのタッチ感。是非触って、軽さと触り心地を感じてください。
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昭和三十五年に前身である「寿屋商店」として創業以来、自然への感謝、お客さまへの感謝、そして働き手の社員への感謝を忘れずに、ここ大阪市浪速区に本社を構え、長い年月革に携わってきました。昨今のトレンドをいち早く取り入れ開発された、極めのいち素材『KARUI(カルイ)』について、開発企画を担当された奥弘之氏にお話を伺うことができました。

―この素材の特徴をお聞かせください。

名前の通り、とにかく軽さを極限まで求めた革になります。0・3ミリという極薄の革なのでもちろん柔らかさも兼ね備えているのですが、実をいうとこの薄さは漉き加工によって得られた革ではありません。革を漉いてしまうと層を削っていきますので、もちろん革の強度自体も下がってしまいます。この革は、鞣し後に行うシェービングという革の厚さを整える作業でここまで薄くしています。そのため、最低限の堅牢性を保ちつつ軽い革に仕上げることができました。
また、今までソフト系の革で様々な素上げの革を作ってきましたが、今までの経験を生かし、さらに軽さだけを突出させた新しい商品になります。この革も同じ素上げで作られた革なので、手に吸い付くようなタッチ感と柔らかさも兼ね備えた革になります。
用途としては、バッグを考えていますが、生地のような軽さと柔らかさもあるので、衣料革としても使いやすい革になります。

―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。

バッグなどのメーカーさんと商品企画のお話をしているときに、軽い革を作れないか?という話題がよく上がります。前回の極めのいち素材で選んでいただいた『ネイキッド』の開発時にも軽い革の話題になりましたので、新商品として開発しました。

―製作にあたって苦労したことなどありますか?

これだけ薄いと軽さと堅牢性の比率をどのレベルに持っていくかが難しくなります。シェービング加工で薄くしているので、ある程度の丈夫さはありますが、それでも軽さを取ると単純に堅牢性は下がります。また、その後のタイコを回す工程でも中で革同士が擦れ合って破れることもありますので、タイコの微妙な調整なども必要になります。開発当初、タンナーさんがいくつかサンプルを持ってきますが、0・5ミリの厚さだと私が望んでいた軽さは得られないので、最終的に0・3〜0・4ミリに落ち着きました。そもそも革の特徴ともいえる〝重さ〞を無くそうとしているので、それを取り除くこと自体が大変でしたね。

(後編につづく)

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各団体・企業情報はこちらから。

株式会社 寿屋(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kotobukiya/
株式会社 寿屋(公式サイト):https://www.v-kotobukiya.co.jp/