来たる108回東京レザーフェアへの参戦が決定した、芸人界きっての革好き、くっきー!さん。
その“前哨戦”として、対談を希望する企業を募ると、その日のうちに、数多くの加盟企業から手が挙がりました。その中からから抽選で選ばれたのはフジトウ商事株式会社。そして登場してもらったのは、業界最若手とも言える21歳の髙𣘺氏です。
年齢こそ違えど、同じ「革への愛」を持った2人によるレザートークが、いま始まります。
Theme01
パンクとバイクの“ダブル攻め”。
少し無理してでも愛用する革との出会い。
髙𣘺
くっきー!さんは、どんなきっかけで革を好きになったんですか?
くっきー!
僕はね、音楽から革ジャンに入ったのがきっかけです。若い頃からパンクロックが好きで、パンクの人って、みんな革ジャンを着てますからね。やっぱりパンクと革ジャンは切り離せません。
髙𣘺
僕はあまりパンクを聞いたことがなくて……。なぜパンクのミュージシャンは、革ジャンを着ているんですか?
くっきー!
たぶんラモーンズっていうバンドがいて、そのメンバーが着ていた影響じゃないですかね。あとはね、セックス・ピストルズっていう伝説的なパンクバンドのシド・ヴィシャスっていうカリスマ的な存在が着てたから、それに憧れてた人も多いと思います。
くっきー!
髙𣘺くんは普段、あまり音楽は聴かないんですか?
髙𣘺
僕はテクノ系を聴くことが多いですね。
くっきー!
テクノか。ってことは、冬はどんなアウターを着てます?
髙𣘺
本当はこういう仕事をしているので「革ジャンです」と言いたいんですが、革ジャンはあまり着なくて……。どちらかと言うとミリタリー系を好んで着ています。
くっきー!
まあお洋服は好きな音楽だけが関係しているわけじゃなくて、流行りとかもありますからね。
くっきー!
僕の場合、きっかけは音楽ですけど、バイクにも乗るので、音楽とバイクのダブル攻め。でもそれぞれにちょっとずつデザインとかが違うから、それも面白いですよね。
髙𣘺
バイカーたちが革ジャンを着るのは、防寒的な意味ですか?
くっきー!
いやいや、単純にカッコいいから。僕もすごく寒くても我慢して革ジャンを着てますよ。
髙𣘺
逆に楽器を演奏する場合は、革ジャンだとステージ上で暑くないですか?
くっきー!
暑いですよ。革ジャンを着て演奏できるのは1曲目だけじゃないですかね。時々ずっと革ジャンのままライブをしているミュージシャンもいるけど、どうしてるのかな……。
髙𣘺
汗で中がへばりついてしまいますよね?
くっきー!
そうそう。裏に透明で、めっちゃ汗を吸うような“未知の素材”を裏地につけてるのかな。コンドームみたいな、ピッチピチの(笑)。じゃないとおかしいですから。
髙𣘺
革ジャンの中にもいろいろなものがあると思いますが、くっきー!さんが好きなスタイルがあるんですか?
くっきー!
ありますよ。革ジャンは大きく分けて『ロンジャン』と呼ばれるロンドン型のものと、『アメジャン』と呼ばれるアメリカ型のものがあって、僕の場合はアメジャンよりも形がタイトなロンジャンが好きですね。でも上半身が大きくて足は細いっていう“曙マックス体系”なので(笑)、ちょっと無理して着てますけど。
Theme02
描けること。ずっと使えること。
他の素材にはない革の魅力とは?
髙𣘺
音楽とバイクをきっかけに革ジャンに入ったくっきー!さんが感じる“革の魅力”ってどんな部分ですか?
くっきー!
一番は「カスタマイズできる」って部分だと思います。僕の場合、革のアイテムを買ってそのままってことはありえなくて、絶対に自分なりにカスタムしてしまう。他の素材だと、なかなかそれができませんから。
髙𣘺
確かに、この革ジャンもいろいろなカスタムがされていますね。どれもめちゃめちゃカッコいい!
くっきー!
カッコいいでしょ? ちょっと高いものを買っても、容赦なくカスタムしてますね。バッチやスタッズをつけたり、ペイントしたり。それは高校の時からやってました。先輩から「カッコいいの、描いてくれ!」とか言われて。
髙𣘺
確かに他の素材だと、なかなか上から描けないですもんね。
くっきー!
そうそう。布とかビニールとかって、「貼る」はできても「描く」は難しいですよね。
髙𣘺
このペイントは、何を使ってるんですか?
くっきー!
これはね、ぜんぶ『ポスカ』。高校の時からずっとポスカで塗ってます。でも「革にポスカ」ってヤバいんですか? 教えてほしい。
髙𣘺
いや、ご自身で楽しむ分には、ぜんぜん問題ないと思います! もちろん職人さんがお仕事で染色するとなると、色落ちのリスクも考慮して、他の方法になるかと思いますけど。見ている限り色もキレイに出ていますし、これまで色移りとかもなかったのであれば大丈夫です。
くっきー!
じゃあプロの職人さんとかは、どうやって塗ってるんですか?
髙𣘺
マスキングテープをしたうえで、革専用の顔料を吹き付けることが多いかと思います。
くっきー!
僕もマスキングテープをしてやってますよ。そういう地味な作業も本当に楽しいですよね。最近は老眼になってきて、細かい作業が少しずつ難しくなってるけど、それでも老眼鏡をかけながら。高校の時から同じことをずっとやり続けてます。
くっきー!
革を扱う側の立場としては、どうなんですか? 一生懸命につくった革ジャンが、こんな風にガラッと変わってしまったら……。
髙𣘺
まったく問題ないと思います。もちろん完成したままの状態で使ってほしいつくり手さんもいると思いますが、持ち主のテイストが入っていくのは、革屋としてもとても嬉しいです。しかもくっきー!さんの場合は、ほんとうにめちゃめちゃカッコよくなってるので!
くっきー!
そう言ってもらえて安心しました! ただこの革ジャンのメーカーである『ルイスレザー』さんには、これを着て顔は出せなくなりましたけど……。やっぱりちょっと気を遣ってしまいますよね(笑)
くっきー!
逆に質問すると、髙𣘺くんはどの辺に革の魅力を感じてますか?
髙𣘺
まずはエイジングですね。使っていくうちに、世界にたったひとつ、自分だけのアイテムになっていくというか。
くっきー!
それはめちゃめちゃ分かります。どんどんカッコよくなっていきますよね!
髙𣘺
はい。使えば使うほど、自分のものになっていく感じが一番の良さだと思っています。
髙𣘺
あともう一つは、革は非常に先人たちの知恵が詰まった素材であるということです。そもそも人間がお肉を食べた後の副産物を利用していますので。
くっきー!
あ、なるほど。それはあまり考えたことがなかった! 確かに革のアイテムとして活用されなかったら、食べない部分は捨てるだけですよね。
髙𣘺
そうなんです。はるか昔から人間が使ってきていて、すでに数千年という年月が証明しているサスティナブルな素材だと思います。
くっきー!
「羽織る」とか「身にまとう」っていう意味では、人類の歴史の中で最も古いものですよね。実際きちんとメンテナンスすれば、一生使えますし。
髙𣘺
はい。これから先もずっと人類とともに歩み続ける素材だと思います。
Theme03
これがくっきー!が愛する革製品。
30年以上も使う相棒も。
髙𣘺
では改めて、今日持ってきていただいたくっきー!さんが愛用する革のアイテムを簡単に紹介してもらえますか?
くっきー!
はい。まずひとつ目は『ルイスレザーの革ジャン』。さっき言った通り、カスタマイズしまくってますけどね。
髙𣘺
マジでカッコいいですね。
くっきー!
カッコいいですよね。これ、ひとつ発明があって、革ジャンってパッチを貼る人が多くて、その一般的なやり方は糸で縫うんです。でも僕は3Mの両面テープでバチッと貼れることに気づいて。
髙𣘺
3Mで!? そんなに強力にとまるんですか?
くっきー!
はい。いちど間違って貼ってしまって、すぐに「違う!」と思ってはがしたら、もう傷になってたくらい強力。でもそういう傷も含めて革だとすべてが味になるからいいですよね。布だったら「ただ汚くて、みすぼらしい」ってなるだけ。でも革はそうではないから。
くっきー!
次は『5連ポーチ』。高校を出た時からもう30年以上は使ってます。これは何革なのかな……。
髙𣘺
これは牛ですね。形を見る限り、おそらくスウェーデンでつくられたものな気がします。
くっきー!
あ、そうそう、そんなところでした!
くっきー!
これね、パンクをやっている人は、だいたいつけてるんです。
髙𣘺
これって何を入れるんですか?
くっきー!
当時はスマホがない時代なので、折りたたみの携帯電話とかポケベルとかね。あとはタバコも。普段からずっとつけてましたよ。
髙𣘺
今もつけるんですか?
くっきー!
最近はつけなくなりました。でも“味の出方”がえぐいですよね。この雰囲気、絶対に人工的にはつくられない。
くっきー!
最後は『オールデン』というメーカーのコードバンの靴。僕が初めて買った高級靴ですね。『ドクターマーチン』とかもありますけど、今日はカッコつけて高級なのを持ってきました。
髙𣘺
これって、オールコードバンですよね? 履き始めてから慣れるまで、痛くなかったですか?
くっきー!
確かにめちゃめちゃ硬かったです。プラスティックの革を履いてるみたいな。でも硬い靴を足に馴染ませる僕のオリジナルの方法があって。『マイケル・ジャクソン方式』の。
髙𣘺
マイケル・ジャクソン? それ、どんなやり方ですか??
くっきー!
真夏にね、足の湿気がふんだんにたまったムンムンの状態で、その湿気を一気に靴に与えるんです。靴を履いて、前にグッと入れ込む、みたいな。
髙𣘺
あ、だからマイケル・ジャクソン! 前傾姿勢の(笑)
くっきー!
そうそう。その湿気で曲げのシワがついて、そのまま今も残ってますから。でも自分の体とか靴にフィットしていくのも、革のいいところですよね。
(後編につづく)