2022.08.18

【極めのいち素材】第102回 第2位 吉比産業株式会社(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第102回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ

【第2位】
企業名:吉比産業株式会社
品 名:ラペレッツァ
<コメント>
厳選した白鞣しベースの牛革に再度タンニンを加え再鞣しをして、革の膨らみと繊維のつまりを出しています。そこにオイルを加え、しなやかなソフト感と表面の吟先のタッチ感を表現しております。ホースレザーのように手触りの安心する優しいナチュラルレザーの逸品。

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創業から130年以上の歴史を持つ吉比産業株式会社では、タンナーとメーカー、職人とデザイナー、そして、人と自然など、長年に渡り革にまつわる橋渡し役を担ってきました。革のはじまりから終わりまでを知ることで、消費者の方に寄り添った革の提案も行えます。今回は、そんな橋渡しならではのやり方で生まれた『ラペレッツァ』の総合監修岩本佳晴氏にお話を伺いました。

岩本佳晴氏

―サスティナブルとの関連性などございますか?

無理やりこじつけるのであれば、クロムフリーでタンニンを落としているので、ナチュラルレザーとしての枠に入るかと思いますが、私自身、革そのものがすでにサスティナブルな素材だと思っていますので、巷の風潮になっている「やれエコだの」「やれSDGsだの」という言葉に踊らされるのは、好きではありません。サスティナブルを意識しすぎるあまりに品質の悪い革が出来上がってしまっては、本末転倒だと言えるでしょう。あくまで革は嗜好品なので、ファッションという基本を疎かにしてしまっては、誰も買わずに売れ残ってしまい、それこそサスティナブルとは遠い存在になってしまいます。

―御社の考えるSDGsな取り組みなどございますか?

革とSDGsという関連性であれば、前述の通り無理やりこじつけるのは好きではありませんが、一つ言えることと言えば、革は生き物なので、もちろん傷があります。そのような傷ものの革もしっかりと使ってあげることが本当のSDGsなのではないかと思っています。

―現在、御社が取り組んでいることはありますか?

自社製品の関係上、デザイナーやパタンナーの方々とお話しする機会が多いです。デザイナーの方と接するのは問屋として珍しいことではありませんが、パタンナーの方は私たち問屋と接することがあまりないので、色々と刺激を受けることが多いですね。そういった製作に関わる方々と「今度こういったモノを作りたいね……」などと雑談をして、お互いにガス抜きができれば、いいと思っています。今に限らずですが、このような関係性を築くことが、革作りでも、モノづくりでも大切なことだと、昔から感じていました。モノづくりはチームワークが大事なので、結局のところ人付き合いなんですよ。どの業界にも言えることだと思いますが、このようなチームワークが最近は疎かになっているのではないかなと思います。今の時代だからこそ、人付き合いを大切にして、チームの構築をすることが業務の効率化やクオリティの向上にもつながると考えています。

―来場者の方々へメッセージをお願いします。

まず、皆さんに言いたいことは、せっかく様々な革問屋が勢揃いする場なので、いろんな人との出会いを求めてください。その中で難しい話にはなりますが、人との出会いの良し悪しをご自分で判断されてください。例えば、弊社であっても、私に頼む場合と他の人に頼む場合とでは、また違った仕上がりになったりします。なので、よく話をしてご自分に合った人との出会いを楽しんでもらえたらいいなと思っています。

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各団体・企業情報はこちらから。

吉比産業株式会社(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kibi-tokyo/
吉比産業株式会社公式サイト:http://www.kibi-1882.co.jp/