2022.07.29

【極めのいち素材】第102回 第3位① 坂本商店(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第102回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいて後編です。(前編はコチラ

【第3位】
企業名:坂本商店(兵庫県皮革産業協同組合連合会)
品 名:黒桟革 型押し グリーン
<コメント>
下地を落ち着いたグリーンに染め、型押し後に黒漆を施しました。グリーンには緊張を緩和し、リラックス効果があると言われています。さりげなく存在感のある製品に仕上がると思います。(※漆には抗菌・抗ウイルス作用があり、科学的に証明されています)

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日本古来の伝統技法である「鞣し」と「漆塗り」の技術を融合させた姫路黒桟革。世界最高峰といわれるパリのファッション見本市「プルミエール・ヴィジョン」が主催するPVアワードのレザー部門で「ハンドル賞」を受賞した兵庫県姫路市の坂本商店。今回は、代表坂本弘氏のご子息が手掛けられた『黒桟革 型押しグリーン』について、同社の坂本悠氏にお話を伺いました。


―サスティナブルとの関連性などございますか?。

まず、クロム鞣しを使っていないので、クロムフリーの革という点では、環境に配慮した製品だと言えます。また、新聞にも掲載されたのですが、黒桟革で使用している漆がコロナウイルスを99.9%以上減少させるという結果が一般社団法人 日本繊維製品品質技術センターの研究において確認されました。このように食肉の副産物の皮を環境に配慮して世の中に還元され、皆さんの健康にも役立てられることが、サスティナブルな要素だと言えるのではないでしょうか。

―御社の考えるSDGsな取り組みなどございますか?

革という素材そのものがSDGsな素材だと言えます。そもそもが食肉で排出される副産物の皮を世の中に還元することを私たちは、昔から行ってきているわけです。ただ、そういった事情はほとんど一般の方々に知れることはなく、単純に「革=命を奪う」という形式だけが広く出回っってしまっています。私たちはそういった実情を広く発信していく必要があると思っています。また、弊社の方針としまして、製品の等級分けをしておりません。革というのは傷があって当たり前の素材として取り扱っています。例えば、弊社が扱っている武道具で言いますと、剣道の竹刀で使用される柄の部分は、一般的に銀面と言われる表側を使うのではなく、床面を表面に使用しています。傷がひどく市場に出せないような革などは、このように竹刀の柄やサンプルに使用したりと、余すことなく市場に流すことを第一に考え仕事しています。

―コロナによる影響で、今までと違う仕事のあり方など変化はありましたか?

海外での取引先も多いので、コロナによる影響はかなりありました。その中で、オンラインを導入した営業法を取り入れました。要はオンライン商談になるのですが、予めサンプルを海外に発送し、通訳さんを通じて説明いたします。発送などが少し大変ではありますが、オンラインでの商談成立も結構ありますので、今後も活用していきたいと思っています。

―現在、御社が取り組んでいることはありますか?
実は自社ブランドを立ち上げて、一般消費者の方にも弊社の独自製品を知っていただこうという動きをしています。去年ぐらいから準備をしており、アップルウォッチのベルトを黒桟革で作って、クラウドファンディングで支援を募りました。今までタンナーという位置は、どうしてもメーカーの後ろに隠れた存在でしたが、私たちのような革屋も今後、消費者との距離を縮め、皮革業界自体を世に広められるような機会を作っていきたいと思い、ブランドの立ち上げを思い立ちました。

―来場者の方々へメッセージをお願いします。
黒桟革は、漆と革が醸し出す独特な風合いを持った革です。ぜひ、ご来場の際は実際に触れていただき、黒桟革の魅力を感じられてください。また、東京レザーフェアは皆様と出会えるせっかくの機会です。世間話でもなんでも構いませんので、お気軽にお声がけください。

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各団体・企業情報はこちらから。

兵庫県皮革産業協同組合連合会(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/hyohiren/
兵庫県皮革産業協同組合連合会公式サイト:https://www.hyohiren.or.jp/
坂本商店公式サイト:https://himejikurozan.net/