2022.08.04

【極めのいち素材】第102回 第3位② 株式会社 久保柳商店(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第102回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ

【第3位】
企業名:株式会社 久保柳商店
品 名:ヴィンテージ
<コメント>
何千時間もの間、タイコで回され、叩かれたヌメショルダー。驚くほど柔らかく肌も擦れ、ヌバックのような風合いになっています。補助のために使う脇役の革ですが、主役以上に存在感のある唯一無二の革です。

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昭和十七年に浅草で創業し、常に新しい革をつくり続ける株式会社久保柳商店の髙津康次氏と極めのいち素材『ヴィンテージ』の提供元であり、大正十四年創業以来、革本来の味わいを活かした「表情のある革」を生み出し続けた長坂染革株式会社の代表取締役である長坂守康氏に『ヴィンテージ』の誕生秘話など、お話を伺いました。

左:長坂守康氏(長坂染革 株式会社) 右:高津康次氏(株式会社 久保柳商店)

―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?

長坂氏:偶然にできたものなので、製造データ自体が存在しない革になります。そのため通常の市場ではビジネスとして扱うのは難しいでしょうね。一点物としての存在価値を売りとした製品になるのではないかと思います

高津氏:ただ、狙って作れるものではないので、例えば、この『ヴィンテージ』をサンプルとして、20〜30枚を1年ほどかけて同じような風合いまで育てることを前提とした発注さえあれば、セミオーダーではないですが、それに近い製品としてのビジネスはもしかしたら生まれるのかもしれないですね。商品として言えば、よくヨットの帆をバッグに再利用したものが市場で見かけますが、そのような商品に近いものだと思います。

長坂氏:他にも売り物としてだけでなく、個展などでのお客様を引き付ける一つにもなる可能性はあります。今でも「あんこ」はたくさんありますし、新しく入ったばかりのルーキーもあります。製造データとまではいきませんが、「何時間回したか…」ぐらいの簡単な日記を写真と一緒に蓄積していくのも、ある意味面白いかもしれないですね。

―サスティナブルとの関連性などございますか?

高津氏:先ほど長坂さんが言われたように元々は、市場に出回ることのない革を空打ちする際のかさ増しとして使われていた革になります。何らかの事情で商品とならず不要となった革が、他の革を生かすための道具となって生まれた新製品です。このストーリー自体が、まさしく今の時代に合った『サスティナブルな革』と言えるのではないでしょうか。

―今の皮革業界について、どのように感じられますか?

長坂氏:この『ヴィンテージ』が生まれた大きな要因として小ロットのお話をしましたが、まさしく、この小ロットが業界の矛盾を表していると思っています。昔に比べてロット数が減少していますが、一方で私たちが食肉の量を減らしているという意識もございません。昨今、例えば豚革については日本の原皮はほとんどが輸出されていて、国内での鞣し量は数少ないと聞いております。輸出が安定していれば良いのですが、もし何かしらの事情でうまく輸出ができない場合、そうした原皮はどうなってしまうのかと考えてしまいます。もし不要な原皮を焼却すると二酸化炭素が多く発生いたしますし、革の存在自体の「サスティナブル」とは真逆なことが起こってしまいます。ですから国内の鞣し産業はこの先も大事にしていかなくてはと考えます。この『ヴィンテージ』は廃棄せずに革をとことん使い尽くすというシンボル的素材と言えるのではないでしょうか。

―来場者の方々へメッセージをお願いします。

髙津氏:今回の『ヴィンテージ』も実際に目で見て、触ってお確かめいただけますし、他にも珍しいものや面白いものも多数取り扱っていますので、ぜひ足を運んでください。

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各団体・企業情報はこちらから。

株式会社久保柳商店(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kuboryu/
株式会社久保柳商店公式サイト:http://kuboryu.com/
長坂染革株式会社公式サイト:https://nagasaka-senkaku.jp/