2023.06.15

【極めのいち素材】第104回 第3位 株式会社 久保柳商店(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第104回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ

【第3位】
株式会社 久保柳商店
品 名:ボタニカルレザー 屋久杉
<コメント>
環境にも人体にもやさしい鞣し剤を使用した白鞣し革に、樹齢1000年以上の屋久杉の端材や埋木から特殊な技法で抽出された染液で染め上げたキップレザーです。
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昭和十七年に浅草で創業以来、常に新しい革をつくり続ける株式会社久保柳商店。革の持つ可能性の幅を広げ、日本の伝統技法を用いた自社ブランドtesaho(てさほう)コレクションの一つ『屋久杉染』について、同社代表取締役の一條真見氏と担当者の長 島洋一氏にお話を伺いました。

―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?

このtesaho(てさほう)コレクションを通じて、弊社が抱えている既存のお客様ではなく、新しい市場への切り口になってほしいと思っています。その中には、フリーのクラフト家さんや一般ユーザーも含まれていますし、全く関係ない業種とのコラボレーションなども期待できると思います。そのためのSNSも立ち上げて、これからも新しい情報などを配信していくつもりです。

―サスティナブルとの関連性などございますか?

草木染め自体は珍しいものではありませんが、世に出ている草木染めのほとんどは化学染料を5〜10%混ぜたものが多く出回っています。分量の数値としては低く感じるかもしれませんが、天然成分と化学成分ではその力加減に大きな違いがあり、たとえその分量を混ぜたとしても100%に近い化学染料の色になってしまいます。弊社の『ボタニカルレザー』は、化学染料を全く使用しない、100%天然染料の草木染めを行なっております。また、屋久杉であれば端材や木屑、倒木などから材料を取るのですが、桜などに関しては、日本各地で行われる桜祭りなどで剪定され捨てられる枝などを集め、それらを材料にして再び社会に革として還元している商品になります。そういった点でもサスティナブルに配慮した商品だといえます。

―御社の考えるSDGsな取り組みなどございますか?

根本的な考え方は今も昔も変わりはなく、革は本来エコな素材として昔から扱われ様々な形となって人々の生活を支えてきた素材の一つになります。私たち革を扱う者として、こういった基本的なことをしっかりと世に広めていくことがとても大切だと考えています。私たちは当たり前だと思っていたことなので、忘れがちだったのですが、今、巷で騒がれているサスティナブルなどは、革というものをわかってもらうにはとても良い機会だと思っています。

―現在、御社が取り組んでいることなどありますか?

今回の屋久杉染もそうなんですが、日本各地から色々と情報を集めた中で、昔から伝わってきている日本特有の技法にスポットを当てた商品づくりに力を入れていこうと動いており、今まさに弊社の独自ブランド『tesaho(てさほう)』を立ち上げ、レザーコレクションを集めているところです。日本各地の伝統技法や職人さんの「手技」を革に落とし込んで作った素材を集めたブランドになります。屋久杉染もその中の一つですが、代表的なものとして、タンニン鞣しで作られた貴重な『藍染レザー』、和紙と革を掛け合わせた『阿波和紙』、着物で有名な『奄美大島泥染』、日本人に愛されている花『桜染』、日の丸に使用された『茜染』など、日本独特の風合いを持ったコレクションに仕上がっています。今後もこの『tesaho(てさほう)』を弊社のプライベートブランドとして、様々なコレクションを増やしていきたいと思っています。

『ボタニカルレザー(屋久杉)』の製品サンプル。

―来場者の方々へメッセージをお願いします。

今回、取材いただいた『屋久杉』はもちろんですが、そのほかのtesahoコレクションも全てブースにて展示いたします。ご興味のある方は、ぜひ一度お立ち寄りいただき、実際の革を見て、触って、感じていただきたいと思っています。皆様のご来場をこころよりお待ちしております。

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株式会社久保柳商店(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kuboryu/
株式会社久保柳商店 公式サイト:https://kuboryu.com/