2024.01.09

【極めのいち素材】第105回 第3位 株式会社 久保柳商店(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第104回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ

【第3位】
株式会社 久保柳商店
品 名:金継ぎ
<コメント>
金継ぎとは、陶器などの割れやヒビを修復する日本の伝統的な技法。傷もその品物の歴史として考え、新しい命を吹き込むという理念の元、金継ぎが行われていることにインスパイアされ、革で表現。革も命の一部である皮を無駄なく活用し、新たな命を吹き込んでいる。
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昭和十七年に浅草で創業以来、常に新しい革をつくり続ける株式会社 久保柳商店。 日本伝統の一つである陶器の修繕技、その名前を受け継いだ新しい革『金継ぎ』も命を無駄にせず繋ぐことが革製品の第一歩と語る同社の清水彰敏氏にお話を伺いました。

―製作にあたって苦労したことなどありますか?

製作段階では意外とすんなり行って苦労という苦労はなかったのですが、色の組み合わせなどで少し苦労しました。下地で使用している箔のバリエーションがどうしても少ないこともあり、色の構成に手間取りましたね。

左から金継ぎ、鉱石、未来、光、コケ、マグマ、湧水と7色のカラーバリエーションを展開。

―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?

弊社が以前からジャパンレザーとして打ち出している、日本伝統と革を融合させた『tesaho(てさほう)』というブ ランドがあります。その中に『藍染め』や『泥染め』、植物の天然染料を用いた『ボタニカルレザー』なども入っているのですが、今回の『金継ぎ』もそのtesaho(てさほう)ブランドの一つとして、国内問わず世界に発信していければと思っております。我々自身が素材としてジャパンレザーを世界に発信することはもちろん必要ですが、最近では、弊社のお客様で今度海外への製品展開が決まったというお話しがあり「ジャパンレザーとして出せるものはないか?」というお話もありました。そのように製品として世界に発信され海外の方々が「なんだこの素材?」と思っていただければ嬉しいですね。

―サステナブルとの関連性などございますか?

先ほどお話しした『ボタニカルレザー』などは天然染料を使用していることからも製作の過程で、SDGsという要素も含まれますが、革自体が遥か昔からエコがベースとなった素材になります。食肉で発生する本来廃棄される皮(スキン)を人の手で鞣し加工を行い、革(レザー)という素材を社会に再び還元するお手伝いを我々はさせていただいています。この『金継ぎ』もそもそも割れて使えなくなった陶器や磁器の破片を再び漆で接着して修繕する技法なのですが、革も同じく命を無駄にしないように人の手で世に継ぐための『革素材』という新しい命だと思っています。〝革そのものがもとよりサステナブル〞ということを再認識してもらうために、『金継ぎ』の意味をデザインとして受け継いだ商品だと言えます。

『金継ぎ』を使用した製品サンプル。

―御社のオンラインによる取り組みなどありますか?

現在は弊社のホームページで主力のラインナップを紹介し、サンプルブックや商品単体でのサンプル帳などを販売しております。その中で気に入っていただいたものを購入していただくことも可能なのですが、やはり一概に素材と言っても生ものになりますので、中には傷があるものやシワがあるものがございます。アウトレットや端切れなどはオンライン販売として出すことも少なからずありますが、レギュラー商品や新作に関しては、実際に見て触っていただいて購入されることをお勧めしております。

―来場者の方々へメッセージをお願いします。

『金継ぎ』以外にも、日本の〝手技〞をテーマにしているレザーブランド『tesaho(てさほう)シ リーズ』も展示ブースでご覧いただけますので、ぜひ来場の際は弊社ブースまでお立ち寄りください。

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各団体・企業情報はこちらから。

株式会社久保柳商店(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kuboryu/
株式会社久保柳商店 公式サイト:https://kuboryu.com/