イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第105回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。
【第2位】
富田興業 株式会社
品 名:輝水馬レザー(キスイウマ)群青色
<コメント>
「輝水馬レザー」は、特殊染色技術により驚くほど軽く、反発力があり、型崩れしにくく、撥水性にもこだわった、独創的なナチュラル素材です。手に取るとその軽さに感動し、所有欲が高まります。生活スタイルを満たす実用的な素材で、豊かな毎日を演出しましょう。
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大正十二年創業の富田興業株式会社は、革を通して「もの」を育てるライフスタイルを提案していきたいという企業理念を掲げ、長年に渡り「もの」づくりのサポートを続けてきました。機能性ばかりに捉われるのではなく、革の表情を一番に考え開発された新しい防水レザーの『輝水馬レザー(キスイウマ)群青色』について、同社の富田裕一氏にお話を伺いました。
―この素材の特徴をお聞かせください。
ネーミングの『輝水馬レザー』というのは、防水機能を輝く水として例えた馬革になります。ある程度の厚みを持った革らしい風合いとソフトなタッチ感を重点に作られています。防水でありながらコーティングを感じさせないナチュラル感とシワにならない復元力もこの革の大きな魅力の一つです。その中でもやはり〝軽さ〞が、この革の最大の特徴だと言えます。馬革を使用していますが、この軽さはまずあり得ないと思いますし、正直 、防水という機能を抜きにしても軽さだけで売り物になる商品だと思っています。また、防水性能を評価する撥水試験も通っており、傘と同じ4級の防水性能を持っています。
―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。
防水レザーは世間でも良くありますが、そのほとんどがいかにもコーティングされているようなレザーが多く、せっかくの革の風合いを潰してしまって「革を持つ喜び」というものが薄れてしまっていることに作り手としましても物足りなさを感じておりました。そうした経緯の中、なるべく革の雰囲気を損なわずに防水レザーができないものだろうかと思ったのがきっかけでした。
革の風合い感、ソフト感、防水感などのバランスを突き詰めた結果、馬革を使用して防水レザーの開発が進みました。最近では厚みのある馬革というのがとても希少になってきて、この原皮は食用として馬肉が流通しているポーランドで調達しており、昨今の世界情勢の問題もあり、流通がかなり難しい状況が続いています。
―製作にあたって苦労したことなどありますか?
この革の特徴がそのまま苦労にはなるのですが、最大の魅力である、ナチュラル感と軽さ、そして防水という機能性のバランスが非常に難しいところになります。油をたくさん染み込ませて防水させようと思ってもこの軽さは得られないので、特殊な油を使用し、何度も試作を繰り返しながら作られています。また、色味も防水であるがゆえに色修正が難しい商品になってきます。そのほかに製作面とは違いますが、市場に出した時の問題点として、調達に非常に時間のかかる商品になります。単純に馬革というだけで調達が難しいのですが、この厚みの革となると約1ヶ月半はみておく必要があります。
(後編につづく)
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富田興業 株式会社(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/tomita/
富田興業 株式会社(公式サイト):https://www.tomita.co.jp/