イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第107回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。
【第2位】
株式会社寿屋
品 名:ネイキッド
<コメント>
革そのまま、素のままの表情。 吸いつく手触り。 一度は触れて下さい。 革らしさだけでよくないですか?
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昭和三十五年に前身である「寿屋商店」として創業以来、自然への感謝、お客さまへの感謝、そして働き手の社員への感謝を忘れずに、ここ大阪市浪速区に本社を構え、長い年月革に携わってきました。
そんな同社が革と本気で向き合った結果、新しく生まれた極めのいち素材『ネイキッド』について、開発に携わった奥弘之氏にお話を伺うことができました。
―この素材の特徴をお聞かせください。
今回は、名前の由来にもなっている「裸」という意味の『ネイキッド』で分かる通り、シンプルな素上げの革というだけなのですが、特徴としましては、触れた時の手に吸い付くようなタッチ感にこだわり、あえて仕上げをせずに革らしい革を求めて作られたものになります。素上げなので経年変化を好まれる方には、革独特の表情を楽しむことができます。また、革の厚みに比べソフトな仕上がりになっていますし、軽さもありますので、小物からバッグ、衣料など幅広い用途にも使える革といえます。
カラーに関しては今の所定番の黒のみですが、お客様の要望に合わせてカラーリングのご依頼を受けることもできます。さらにこの革をもとに加工を行うこともできます。
今の状態ではスムース感が強い革ですが、空打ちして揉み解すことでシボを出したり、アイロンをかけてもう少し艶を上げるなど、汎用性の高い商品となっています。
―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。
素上げの革というのはどうしても傷などが目立ちやすい商品のため、ビジネスという観点ではあまり好まれて作られる革ではありません。最近の市場を見ていてもシュリンクや型押しが主流で、素上げを見ることは少なくなった気がしていました。弊社自体の考えもそうですが何より私自身、革そのままの表情が好きで素上げにこだわっていきたいと思い開発しました。この『ネイキッド』をベースとして、素上げシリーズとまではいきませんが、色んな派生レザーをこれからも開発していきたいと思っています。
―製作にあたって苦労したことなどありますか?
タンナーさんにイメージを伝えることはしますが、素上げの工程はある程度出来上がっているので、苦労という苦労ではありませんが、細かい微調整ぐらいですかね。素上げは名前の通りほとんど加工を施さないので、ある程度の原皮の選定はやっています。ただ、革本来の持ち味を生かすため、厳選しすぎると弾かれた原皮はどうするんだ?・・ということになります。無駄なく世の中に革を還元するためにも原皮の時点で厳選するのは良くないかなと考えています。
苦労といえば染色に少し手間取りました。今回作ったのは黒だけなのですが、この黒色というのがなかなか思った色になりにくく、理想の色になるまで試行錯誤の繰り返しでした。
(後編につづく)
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株式会社寿屋(公式サイト):https://www.v-kotobukiya.co.jp/