イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第107回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。
【第3位】
株式会社ミヤツグ
品 名:モストロ
<コメント>
ミヤツグオリジナルレザー。オイルをたっぷりと染み込ませ、パラフィンワックスを手塗りすることによってしっとりと滑らかな肌触りを実現。 カラーは全27色。ライフスタイルに合わせたカラーリングと独特のエイジングを存分に楽しめる自慢のオリジナルレザーです。
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創業70年以上の歴史を持つ株式会社ミヤツグは、創業者宮前末次の「信用第一」という意志を土台に、二代目の宮前潔志が発展させた幅広い分野での革商の道を三代目の宮前健次郎が引き継ぎ、今なお走り続けて成長してきました。
そんな想いを背景に同社の長い歴史と共に歩んできた極めのいち素材『モストロ』について、EC事業部で活躍されている前田拓也氏にお話を伺いました。
―この素材の特徴をお聞かせください
『モストロ』は、銀面を軽く擦った上にワックスを手塗りして仕上げた1.5mm厚の革です。銀面を擦ることで生じた細かな起毛をワックスで寝かせることでサラサラとした手触りを感じられる素材です。
オイルなどを浸透させた革と違い、ワックスは表面の仕上げとして使いますので、タッチ感に大きな差が出ます。また、経年変化もしやすく蝋引きタイプの革ならではの艶のある表情が魅力です。劇的に変化するその特徴からイタリア語で「化け物」という意味の『モストロ』が商品名となっています。
カラーリングは現在、27色で展開しています。開発当初は、4〜5色程度だったのですが、お客様の要望と共に増えていきました。植物タンニン鞣しの染料仕上げの革では珍しい、パステルカラーなどの鮮やかな色味も魅力の1つです。
―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください
20年前、イタリアンカジュアルやヴィンテージブームが影響し、ヌメ革のような素肌感のあるレザーを開発したいという思いから始まりました。開発自体はたつの地区のタンナーさんに『モストロ』の原型を作っていただき、その後、マルヒラ社にレシピを引き継いでいただいています。『モストロ』の基本的な特徴は当時のままですが、品質向上に向けて今なおアップデートを続けており、最も人気の高い商品の1つになっています。
―製作にあたって苦労したことなどありますか?
私自身は製作に携わったわけではありませんが、当時は試行錯誤の繰り返しで苦労した話をよく聞いております。今では定番商品という位置付けになりましたが、その品質を保つための努力は怠っておりません。染色に関してもタンナーさんでレシピはありますが、原料の個体差で色の染まり具合が変わってきます。原料ロットでの違いがある中で繊細な色の微調整で同じ色に仕上げるなど職人さんの技量が重要になるレザーです。革のクオリティを保つ。大切に作っていただいた革を1枚1枚作り手に届ける。すなわち革の安定供給というのは革問屋としての使命だと思っています。
(後編につづく)
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各団体・企業情報はこちらから。
株式会社ミヤツグ(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/miyatsugu/
株式会社ミヤツグ 公式サイト:https://www.miyatsugu-store.jp/