2024.11.05

【くっきー! ✕ TLF <後編>】理想の1枚との出会いは実現する!?

PROFILE

くっきー!さん

野性爆弾

野性爆弾 くっきー!

1976年、滋賀県生まれ。1994年にロッシーと野性爆弾を結成。自作の小道具を使用したコントで人気を集める。著書に『口だけ紳士と6つの太陽』(ヨシモトブックス刊)、『野性爆弾くっきーの[激似顔マネ]図鑑』(扶桑社刊)など。アーティストとしても活動しており、これまで『超くっきー!ランド』、『COOKIE 野性爆弾くっきー! SOLO EXHIBITION』など展示も開催。

INTERVIEWER

髙𣘺 拓夢さん

フジトウ商事株式会社

大正10年創業、天然皮革の卸売をメインに店頭での小売も行う老舗企業、フジトウ商事株式会社に新卒入社し、現在2年目となる21歳(取材時)。文化服装学院でカバンづくりを学ぶも、自身が志した奇抜なデザインができるメーカーには出会えず、素材を扱うフジトウ商事に就職。革の奥深い世界の中で、先輩たちに負けない知識を持つべく、日々奮闘中。

芸人界きっての“革好き”として知られるくっきー!さんを招いて行われた対談企画。

前編では、くっきー!さんと革との出会いの話に始まり、どういった部分に魅力を感じるかなどが紐解かれていきました。

そしてさらに熱を帯びていくレーザートーク。革を愛する2人は打ち合わせスペースを飛び出し、本物の革を触りながら、さらに深い部分へと話を進めていきます。

Theme01

くっきー!の疑問に革のプロが答える。
革の伸ばし方方や、色の出し方の難しさ。


くっきー!

今日はせっかく革のプロの人に会うから、前から気になってたことを聞きたいなと思ってまして。


髙𣘺

え、僕なんかで大丈夫でしょうか……。


くっきー!

いやいや、ぜんぜん大丈夫ですよ!


髙𣘺

はい。ではどんなお悩みでしょう!

もはや説明不要。芸人であり、アーティストであり、生粋のレザー愛好家、くっきー!さん。

迎えるのは、業界最若手のひとり、21歳の髙𣘺さんです。


くっきー!

この『ルイスレザー』の革ジャン、僕がちょっと痩せたこともあって、少し縮めたいと思って2回ほど洗ってみたんです。その結果、ビンテージ感はすごく出たし、サイズもよくなったけど、シッワシワになっちゃって……。このシワシワ、もう直らないですか?


髙𣘺

ん〜、この革ジャンが戻るかどうかははっきりとは言えませんが、一般論として伸ばす方法はふたつあります。ひとつ目は、革を濡らして、吊り込むことでピンと伸ばす方法です。そもそも革をつくる工程の中でそれをやっています。


くっきー!

なるほど。濡らして、伸ばすんですね。

ビンテージ感が出たものの、狙っていないシワも出た。くっきー!さんからの質問は、革の伸ばし方に関するものでした。


髙𣘺

ふたつ目はアイロンですね。皮革用のアイロンを用いて、高温と高圧でグッと伸ばすことができます。ただどちらの方法も1枚の革の状態であれば効果はありますが、製品の形になってしまった今は難しいかもしれません。


くっきー!

でもなんとなくの“勘”で、上から吊って、スチームアイロンを当ててました。それで少しマシになったところもあって。


髙𣘺

吊って、熱して、伸ばすというのは、理論的には合ってます。さすがですね!


くっきー!

確かにシワシワになっちゃったけど、それも含めて味になるので、やっぱり革はいいですよね。

髙𣘺さんは、プロとしての知識で、しっかりと答えていきます。


くっきー!

もう一つ、「何色の革をつくるのがいちばん難しいのかな」っていう疑問が昔からありまして。


髙𣘺

難しいのはグレー系ですかね。そもそも基本的には白い染料っていうものがないので。


くっきー!

でも白の革ジャンとかはあるけど、あれはどうしてるんですか?


髙𣘺

あれはほとんどが顔料ですね。上から塗っている感じです。


くっきー!

あ、なるほど。じゃあグレーが難しいのか……。


髙𣘺

はい。黄色側にぶれたり、白側にぶれたりして、差が出やすく、一定のグレーっていうのがなかなか出ないんです。


くっきー!

やっぱりそうですか。僕ね、グレーの革ジャンがめちゃめちゃほしくて。でもぜんぜん売ってないんですよね。「合皮丸出し」みたいな、安っぽいのならあるけど。


髙𣘺

もしかしたらくっきー!さんのお眼鏡に叶うグレーの革がうちにはあるかもしれません。1階の店頭にいってみましょう!

Theme02

ここにしかない革との出会い。
理想の革ジャンは、できる? できない!?


髙𣘺

ここが1階です。こういう革がたくさんあるような小売店に来たことはありますか?


くっきー!

いや、ないんです。タンナーさんの工場には行きましたけど。あるとすれば生地屋さんみたいなところの一部にレザークラフト用にちょっとだけ革が置いてる、みたいな。だからこれだけバカでかい状態の革を見るのもはじめてですね。


髙𣘺

ここにある大きなものは、牛の半裁ですね。本来は背骨側にもう半分があります。


くっきー!

“ひらき”の状態ってことですね。すげぇ! しっぶっ!!

見渡す限り、革とその関連グッズが並ぶ店内に、くっきー!さんのテンションも上がります。


髙𣘺

なにか見たいものとか、気になるものはありますか?


くっきー!

やっぱりさっき言ってたグレー系ですかね。


髙𣘺

そうですよね。オススメのものがありますよ。『ジェフ・ウォール』という革ですね。


くっきー!

うわ、カッコええ!! やばっ、これ。ベコベコにしぶい!

グレーの『ジェフ・ウォール』に、くっきー!さんも一目惚れ。


髙𣘺

ありがとうございます。これは『にかし』という製法を使っていて、たっぷりと脂を入れて、さらに擦って揉むことで独特の風合いが出ています。少し曇った感じが特徴ですね。


くっきー!

いや、まじで渋いですね、これ。この革で、革ジャンってつくれますか?


髙𣘺

もちろんです。カッコいいですよね。


くっきー!

僕の体やったら、何枚いります? 1枚でいけますかね??


髙𣘺

1枚は微妙なところですね。シングルなのか、ダブルなのか、そういうデザインでも変わってきます。


くっきー!

革がカッコええから、ダブルを超えて「フォース」にしよかな。えり4枚で、フォース(笑)

さっそく“クセ”の強い方法で採寸を(笑)


くっきー!

この革を買って、職人さんに革ジャンをつくってもらいたいくらい! これ1枚、どれくらいするんですか?


髙𣘺

この革だと、だいたい2万円くらいですね。


くっきー!

なるほど。それに職人さんにつくってもらう費用がかかるってことですね。まじでカッコいい。つくりたい!


髙𣘺

もしよければ、この革はプレゼントも可能です。1枚であれば社長からOKをもらっているので……


くっきー!

マジっすか! 本当につくろうかな。一気にワクワクしてきた!!

収録時には他にもたくさんの種類の革を紹介・説明してもらいました。


くっきー!

あとは例えばテリッテリのやつとか、ありますか?


髙𣘺

ではスムース系の革をご用意しますね。


くっきー!

わー、キレイですねー。嘘みたいにキレイ!


髙𣘺

これはヌメっぽいですけど、ヌメじゃなくて、クローム鞣しで染料仕上げをした革です。革のコンディションがあるので、ロットによってばらつきは出ますが、それも面白いところですね。


くっきー!

これ、そのまま額に入れたいくらいのキレイさですね。

革を見ながらのトークは、どんどん専門性のある内容へと進んでいきます。


髙𣘺

この艶感を出すために、普通はツヤ剤を吹いて仕上げるのですが、それだと面白くないので、つくる工程の中でいちど起毛させて、それを潰すことでこの艶感を出しています。


くっきー!

靴磨きみたいですね。最後にブラシで潰してツヤっとさせるっていう。


髙𣘺

コードバンを意識して、このツヤを出していて。面白いですよね。


くっきー!

いや〜、ここ、楽し! いいショップを見つけられました。あと髙𣘺くんは、やっぱり革を前に話をすると、目がキラキラしてますね。椅子に座って話してたさっきまでとはぜんぜん違う!!


髙𣘺

え、そうですか?(笑)


くっきー!

うん、違う違う。前髪のカールも、さっきよりクルン! っと。『エスパー魔美』みたいになってますよ(笑)

Theme03

業界の課題に必要なのは……。
くっきー!が考えるまさかの解決法とは?


エスパー魔美

最後に革業界が抱えている課題がいくつかあるので、それに対してくっきー!さんなりの解決法などをいただきたいなと。


くっきー!

はい、了解です!


エスパー魔美

まず直近で直面しているものとしては、職人さんたちの高齢化が進んでいて、その技術を継承する若い人がいないという問題があります。


くっきー!

どこの業界でもある問題ですね。継ぎ目がうまくいかずに、衰退していく……。


エスパー魔美

はい。革が出来上がるまでには、調色をしたり、アイロンをかけたり、たくさんのプロの技が必要なのですが、それを担っている職人が60〜70代の方が多く、このままでは数十年後には加工の幅が一気に少なくなってしまいます。


くっきー!

う〜ん。まずは若い人たちに「職人さんがカッコいい仕事である」っていうことを知ってもらうことが必要ですよね。あとは今がんばってくれているベテランの人たちに、できるだけ長い間、活躍してもらわないといけない。そうすれば後継者が見つかるまでの期間も長くなるから。そのためには……サプリの配布かな!


エスパー魔美

革業界に必要なのは、サプリですか!(笑)


くっきー!

そうそう。それが現実的かもしれない。国として、サプリを配布するっていう(笑)

フジトウ商事のエスパー魔美こと(!?)髙𣘺さんは、これからの革業界を担っていく存在。


髙𣘺

次に、革をつくるための『染料』や『鞣し剤』といった薬品はあまり日本ではつくられていません。海外からの輸入に依存している部分が多く、為替の影響なども大きくなります。


くっきー!

なるほど。じゃあここ最近は、余計にお金がかかっちゃうってことか。


髙𣘺

はい。業者さん、タンナーさん、そして我々のような商社も値上げをしないといけなくて、結果的に販売価格も上がるので、一般の消費者さんにも影響が及びます。


くっきー!

ん〜……、おそらく日本の職人さんたちは品質へのこだわりが強いですよね? だから日本でつくると高くなって、海外のものを使うのがスタンダードになっているんじゃないかな。だから日本の職人さんたちを増やして、安くつくれる環境を整えるのがいいかもしれません。つまりは今いる職人さんたちにもっと頑張ってもらわないといけないから、やっぱり……サプリを。


髙𣘺

またサプリ!(笑)


くっきー!

うん。サプリですね。フジトウ商事さんでも、サプリ部門、つくったらどうですか?


髙𣘺

いちおう……社長に伝えてみます(笑)

真剣にトークを進めながら、程よく笑いも入れる。プロの技を見せていただきました。


髙𣘺

最後に時代の流れ的にも特に若い世代の“革離れ”が進んでいて、東京レザーフェアの来場者数も減少気味という問題もあって……。


くっきー!

そうですよね。僕はいちおう「革ってカッコいいよ」ってことを伝えたくて、一生懸命に発信しているつもりですけど。


髙𣘺

はい! 業界としてもありがたいです!!


くっきー!

もっと革好きの人口が増えたほうがいいので、僕よりももっと影響力が強そうな……例えばキムタクさんとか、もしくはそれをも超えるパリス・ヒルトンとか、そういう世界的な影響力を持つ人に、どんどん革を着てもらいたいですよね。だって革ジャンがカッコいいって思っているの、僕たちの世代がギリギリじゃないかな? だから僕らも長生きしないといけない。


髙𣘺

ん? ……ってことは、、、


くっきー!

サプリですね! ほんま、サプリ!!


髙𣘺

分かりました。くっきー!さん、今日は本当にありがとうございます!


くっきー!

こちらこそ、本当に楽しいショップを見つけられて嬉しいです。ありがとうございました!