2022.08.09

【極めのいち素材】第102回 第2位 吉比産業株式会社(前編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第102回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。

【第2位】
企業名:吉比産業株式会社
品 名:ラペレッツァ
<コメント>
厳選した白鞣しベースの牛革に再度タンニンを加え再鞣しをして、革の膨らみと繊維のつまりを出しています。そこにオイルを加え、しなやかなソフト感と表面の吟先のタッチ感を表現しております。ホースレザーのように手触りの安心する優しいナチュラルレザーの逸品。

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創業から130年以上の歴史を持つ吉比産業株式会社では、タンナーとメーカー、職人とデザイナー、そして、人と自然など、長年に渡り革にまつわる橋渡し役を担ってきました。革のはじまりから終わりまでを知ることで、消費者の方に寄り添った革の提案も行えます。今回は、そんな橋渡しならではのやり方で生まれた『ラペレッツァ』の総合監修岩本佳晴氏にお話を伺いました。

岩本佳晴氏

―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。

この革の原料はトルコ産になるのですが、弊社のやり方として、トルコでフィニッシュした革をそのまま卸すやり方とトルコの革をベースに日本のタンナーで再加工するやり方の二通りを行っており、今回の『ラペレッツァ』は後者のやり方を採用しております。その理由というのが、素材開発のきっかけになるのですが、もともと私はトルコの革を高く評価しており「その革を原料として、日本の技術を掛け合わせたらどのような革が生まれるだろう……」という思いから、この開発が始まりました。

―この素材の特徴をお聞かせください。

まず、トルコの革の特徴から説明させていただきます。トルコの革はキップに近い200デシぐらいのバンまわりなので、繊維も締まっていますし、ダレもないのが魅力的な革になり、原料としてもすごく品質のいいものだと、常々思っておりました。さらに今回は、その原料を最大限生かすためにも白鞣しの革を原料に、再度タンニンを加え再鞣しを行うことで、柔らかさときめ細やかさを出しております。触った時のタッチ感は赤ちゃんの肌のようなしなやかさで、きめ細かい表情に仕上がりました。また、クロムフリーの白鞣しなので、余計なベース色がない分、発色がとても良く、色の再現性がとても高い革になります。正直この革を極めのいち素材に出して評価された時、「まだ、この革の良さを分かってくれる人がいるんだな」と思って安心しました(笑)。弊社が出す革って結構、変態気質なところがあって、あからさまに変わった革を出すのではなく、普通にあるんだけど奥が深いような革を出して、「気づくかな〜」と陰ながら楽しんでいます(笑)

―製作にあたって苦労したことなどありますか?

弊社の特徴としまして、タンナー気質な問屋であり、製品も作っているので消費者との距離も近いです。原料から消費者までの幅広い知識を持っているため、どこの原皮を使って、どこのタンナーに頼めば、どのような革に仕上がるといった一連の製造ラインを持っています。このような製造ラインによって生まれた製品になりますので、苦労という苦労はありませんが、試作は何度か行っていますので、完成までにはそれなりの時間がかかった革になります。

―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?

間違いなく革としたらクオリティは相当いいと思います。ただ、どうしてもコストが高くなるので、使いこなせる革かというと、ちょっと難しくなるでしょうね。この革は素上げになりますので、「あれはダメ」「これはダメ」といったような日本の基準の話になってくると、極端に市場が狭くなる革になります。でも、私はこの革は市場が狭くていいと思っていますし、そもそも市場を広げようと思ってこの革を開発していません(笑)。自分たちで製品も作っているので、いい革ができたら自分たちで使えばいいかなと思って開発しました。

(後編へとつづく)

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吉比産業株式会社(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kibi-tokyo/
吉比産業株式会社公式サイト:http://www.kibi-1882.co.jp/