2023.06.26

【極めのいち素材】第104回 第1位 株式会社 寿屋(前編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第104回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。

【第1位】
株式会社 寿屋
品 名:オリガミ
<コメント>
厚み約0.5mmと極限まで漉いた革にオイルを含ませ形状を維持、仕上げは革らしい素上げで手触りも抜群の折り紙をイメージして作製された『オリガミ』。
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昭和三十五年に前身である「寿屋商店」として創業以来、自然への感謝、お客さまへの感謝、そして働き手の社員への感謝を忘れずに、ここ大阪市浪速区に本社を構え、長い年月革に携わってきました。極めのいち素材で見事1位に輝いた『オリガミ』について、同社の奥弘之氏にお話を伺いました。

―この素材の特徴をお聞かせください

特徴としましては、紙のような質感と軽さを持った革で、折り紙のように形状を維持するために、極限まで薄くした革に調合した特別なワックスを含ませ作られています。また、素上げによる仕上げになるのですが、それにより革らしい素材感を保つことができ、製品になった場合でも革本来の経年変化を楽しむことができる素材になっています。床面も革らしいスエード感はなく、今までの革の概念を持たない革が出来上がりました。カラーバリエーションに関しても、現在で6色ほど用意をしていますが、特に制限はなく、濃い色から淡い色など様々な色に対応していく予定です。実際の折り紙のように色とかできると面白いでしょうね(笑)。

―用途としては、どのようなものを想定されていますか?

やはりこの薄さなので、靴などは難しいでしょうが、財布やバッグなどに使っていただいても面白いと思いますし、ジャケットなどの衣類にも使用できる素材になります。何を作るかはメーカーさん任せになりますが、例えば、折り紙の機能を生かして、縫わない小物類なども面白いかもしれないですね。他にも軽さを生かした革のエコバッグや封筒、書類入れなどの雑貨類にも適応できると思っています。私個人としては、可能ならそのまま「折り紙」として製品化するのも面白いかなと思っています。海外には折り紙の文化がないので、その文化とともにジャパンレザーとして、世界に発信する第一歩となる商品になってくれると嬉しいです。

奥弘之氏

―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。

私自身レザーソムリエの中級である『プロフェッショナル』を持っていまして、企画などに携わっております。そのため、常日頃からいろんな情報にアンテナを張ってもいますし、新しい革の開発も行っております。この『オリガミ』もそういった経緯から作られ、約0.5〜0.6mmと極限まで薄くした革を使用して、紙のような質感の革ができないだろうか?という思いから、タンナーさんに相談してこの企画がスタートしました。

―製作にあたって苦労したことなどありますか?

やはり最初から上手くいかないことが多く、タンナーさんのところで実際に折りながらワックスの調整をしてもらったりと何度もやり直しはしました。単純に薄く軽い革であれば作ることは簡単なのですが、そこに形状維持を持たせ、紙らしさを加えることが難しく試行錯誤の毎日でした。強度、形状、質感、軽さなど紙と革の両方の特徴をバランスよく保たせ、どこを完成値として判断するかが重要でしたね。また、鞣しに関してもクロム鞣しだと柔らかすぎて形状が戻ってしまったり、タンニン鞣しだと強度がなく、すぐに裂けてしまったりするので、どちらを採用するかでも迷いました。結果的にはクロム鞣しに調合したワックスにより、うまく形状を維持させることに成功しました。最終的には折れ感や質感など、想像通りの仕上がりに満足しています。

(後編につづく)

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各団体・企業情報はこちらから。

株式会社 寿屋(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kotobukiya/
株式会社 寿屋(公式サイト):https://www.v-kotobukiya.co.jp/