2023.06.22

【極めのいち素材】第104回 第2位 株式会社 協進エル(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第104回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ

【第2位】
株式会社 協進エル
品 名:絹革
<コメント>
生後6ヶ月以内のカーフを使用。「絹」のようになめらかで、やわらかく、「包む」ことができる革として開発されました。
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昭和二十二年創業の株式会社協進エルは、タンナーをやっていた経験もあり、原皮から鞣し、革に至るまでの知識を生かし、企画・ディレクションなど生産者と消費者の架け橋なども行っています。そんな同社から、日本の伝統である風呂敷『包む』をテーマに作られた「絹革」について、担当者の大川祐也氏にお話を伺いました。

―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?

ベビーカーフは見ての通りサイズとしても小さいですし、原皮の確保といった点で貴重な革と言えます。また使用している薬品も特殊なものになりますので、コスト面やロット面を考えても通常の卸先では難しい商品になります。先々を見据えて、従来の卸先ではなく新しい販路開拓の布石となる商品として考えています。実際に着物のレンタル業者さんに袋物の提案として動いているので、今後もそのように思いもつかない販路先が見つかればと思っています。『包む』という日本文化に触れ合った革づくりを意識しましたが、これを皮切りに今後も日本文化と革という点でもジャパンレザーを意識した、開発も視野に入れていきたいですね。

―サスティナブルとの関連性などございますか?

この『絹革』を作っているタンナーさんがLWG認証を取得しているタンナーさんなので、使用している薬剤や染料の安全性、水処理などが整った環境で生まれたレザーになります。また、使用している原皮はベビーカーフなので、死産や奇形などで生まれた寿命の短い仔牛を一部使用させていただいています。残念なことにそういった仔牛は食用にもならないため、通常であれば廃棄されるのですが、せめて皮だけでも再活用し、世の中にレザーとして還元することが大切だと思っています。その点でも『絹革』は、持続性の高いサスティナブルな商品と言えます。

―WEBやオンラインなどの取り組みなどありますか?

今までは百貨店の方への販路を中心にやっていましたが、最近ではターゲット層もだいぶ変わってきました。フリーのクラフト家さんも多くいらしてますし、最近多いのが「個人でも売ってくれますか?」という問い合わせも増えています。弊社のレザークラフトのホームページはありましたが、今度からは革問屋の方でもホームページを立ち上げて様々な革に関する情報を発信していく予定です。

『絹革』を使用して作られた着物の袋物サンプル。

―皮革業界として「今、何を為すべきか?」など、ご意見ありますか?

革は元々サスティナブルなので、今まで通り当たり前のことを当たり前に伝えていくことが大事だと思っています。例えばヴィーガンレザーなどが良い例なのですが、一般ユーザーからしたら『ヴィーガンレザー=エコ』という認識が多いと思います。全てのヴィーガンレザーがそうではないかもしれませんが、それらを作る原材料には石油が使用されます。使わなくなって廃棄する場合でも自然に還らない素材です。このように商品名やイメージだけに踊らされるのではなく、革というものをしっかりと理解できる環境づくりも皮革業界に携わっている者の使命だと思っています。

―来場者の方々へメッセージをお願いします。

以前は業者の方が多くいらしていましたが、ここ5年ほどで客層もだいぶ変わってきました。それこそ、一般の方や業種の違うメーカーさんなど、多種多様な方々が来場されています。今、世の中全体でサスティナブルの動きも出ていますので、これを機会に来場者の方々へも「革は元々がサスティナブル」として生まれたものだということを伝えて、広めていければと思っています。

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各団体・企業情報はこちらから。

株式会社 協進エル(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kyoshin-elle/
株式会社 協進エル(公式サイト):http://www.kyoshin-elle.co.jp/