2024.01.05

【極めのいち素材】第105回 第3位 株式会社 久保柳商店(前編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第105回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。

【第3位】
株式会社 久保柳商店
品 名:金継ぎ
<コメント>
金継ぎとは、陶器などの割れやヒビを修復する日本の伝統的な技法。傷もその品物の歴史として考え、新しい命を吹き込むという理念の元、金継ぎが行われていることにインスパイアされ、革で表現。革も命の一部である皮を無駄なく活用し、新たな命を吹き込んでいる。
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昭和十七年に浅草で創業以来、常に新しい革をつくり続ける株式会社 久保柳商店。 日本伝統の一つである陶器の修繕技、その名前を受け継いだ新しい革『金継ぎ』も命を無駄にせず繋ぐことが革製品の第一歩と語る同社の清水彰敏氏にお話を伺いました。

―この素材の特徴をお聞かせください

牛革をベースに金箔のシートを貼って、その上から顔料を吹き付けた革になるのですが、その使っている顔料が特殊で、自然なヒビが発生する顔料になります。そのため、このように自然な『ヒビ(クラック)』ができ、その下にある金箔のシートが表れる仕組みになっております。この割れ方はナチュラルクラックと呼ばれており、意図的に割るわけではなく自然なヒビによるもので、一枚一枚違う表情を持った革に仕上がります。

また、通常の箔を使用したレザーに比べ、表面を顔料でコーティングしている状態になっており、耐久性の向上に繋がっているのもメリットの一つだと言えます。

―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください

元々は別のカラーバリエーションで出している『マグマ』や『コケ』などをイメージした革づくりがこの素材開発のきっかけでした。昔からお取引しているタンナーさんの中に、このナチュラルクラックの顔料を使われている工場さんがあったのを思い出して、イメージをお伝えしたところ、顔料の下に箔を乗せてみてはどうだろうかということでスタートしました。そうして出来上がった革ですが他の革同様、市場に出す中でお客様から「他の色はないの?」という要望が必ずあります。そのような要望に応える中で生まれたのが『金継ぎ』でした。

また、カラーについては、お客様の要望によって色の組み合わせも可能になります。例えば、『金継ぎ』の下地をゴールドではなく、シルバーや赤箔にするといったオーダーを受けることもできますので、用途に合わせたカラーバリエーションができると思います。

―この商品はどのような製品に合うと思われますか?

鞄・小物から幅広い用途に使用できると思いますが、そこに固執してしまいすぎると偏った商品になってしまうため、そこまで用途を意識しての開発は行なっておりません。弊社の『泥染め』などもそうなのですが、職人さんは私たちも驚くような製品を作られることが多く、この『金継ぎ』も同じように新しい用途の発見ができる素材の一つになると思います。
最近ではインテリア関係のお客様も増えており、変わったものとしましては、内装の壁紙として使用したいというご依頼がありました。バーカウンターのキャビネットにヌバックを使用するという贅沢なつくりで、新しい革の使い方だなと感心しました。

このように革という素材そのものの提案やお客様に合ったタンナーさんとのアジャストなどは行いますが、製品提案は、逆にお客様に驚かされてばかりです。

(後編につづく)

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株式会社久保柳商店(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/kuboryu/
株式会社久保柳商店 公式サイト:https://kuboryu.com/