イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第102回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。
【第1位】
企業名:富田興業株式会社
品 名:レッザボタニカ®︎お茶
<コメント>
レッザボタニカ®は食の副産物である「皮」を植物由来の副産物であるポマースで鞣すサスティナブルな取り組みです。循環経済への貢献と視点が評価され、2020年グッドデザイン賞を受賞しています。今回は伊藤園との契約により『おーいお茶』の茶がらからカテキン成分を再抽出し、タンニン鞣しに応用した「レッザボタニカ®お茶」を開発しました。革としてのナチュラルな表現に加えて、カテキンの抗菌・防臭効果が備えられています。
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大正十二年創業の富田興業株式会社は革を通して「もの」を育てるライフスタイルを提案して行くというテーマを掲げ長年に渡り「もの」づくりのサポートを続けてきました。『レッザボタニカ®』は、食の副産物である「皮」を植物由来の副産物であるポマースで鞣すサスティナブルな取り組みだと語る、同社の森田正明氏にお話を伺いました。
―この素材の特徴をお聞かせください。
『レッザボタニカ®お茶』は、緑茶飲料の製造時に排出される〝茶殻〞に含まれるタンニン成分を使って、革の鞣しに活用している「サスティナブルレザー」になります。この鞣しに使用している茶殻には緑茶成分のカテキンが含まれており、カテキンの効果によって抗菌・防臭効果も備わった素材になっています。
―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください
靴業界、バッグ業界などのアパレル業界も含め、私たち皮革業界も一種の過渡期に来ており、何か変化を迎えられるような課題がないかと探している中、たまたま伊藤園様とお会いする機会がありました。そういった経緯の中「サスティナブル」に関する話題になり、伊藤園様では毎年5万トンを超えて排出される茶殻の有効活用を模索している、というお話を伺いました。茶殻と言えばカテキン(ポリフェノール)が含ま れていることになるので、「実は革というのはポリフェノールで鞣されているんですよ」という話からこの企画がスタートしました。また茶殻に含まれる緑茶成分のカテキンには抗菌・消臭効果も備えているとの事でしたので、そういった機能も革に持たせるということもテーマのひとつでした。結果として自然由来の原料を使うことで、お客様にも安心して身に着けて頂けるものが開発できたのではないかと自負しております。更に、環境にやさしい製品の研究開発を通じて、持続可能な社会への実現へ向けた取り組みができているのかな、との思いもあります。
―製作にあたって苦労したことなどありますか?
開発までに6〜7年ほどかかった製品になりますので、様々なハードルはありました。その中でもやはり「お茶で皮を鞣す」という前例のないプロジェクトになりますので、データのないゼロからのスタートということもありました。革に合うように成分の調整を何度も行い、失敗しては、またやり直しという試行錯誤の繰り返しでした。茶殻で鞣すこの工程が一番の苦労した点だと言えます。
―実際に出来上がった素材は想像していた通りでしたか?
そうですね、最終的にはイメージ通りのものができました。特徴も含めて、クオリティはかなり高いものが仕上がったと感じております。当初、狙っていた部分としましては、お茶の成分であるカテキンによる抗菌効果・消臭効果も革として得られるかどうかが、課題の一つでした。結果的には、抗菌効果・消臭効果とも数値として得ることができましたので、カテキンによる機能もうまく革に落とし込むことができたのではないかと思っております。
―サスティナブルとの関連性などございますか?
昨今の物余りの時代では、ただビジュアル的にかっこいいという価値観だけでは消費者の方々を満足させる事ができないと思っています。革というのは、そもそもが食肉の副産物なのですが、この『レッザボタニカ®お茶』に関しては、副産物と副産物でできた非常にサスティナブルなストーリー性を持った製品だと言えます。
(後編へとつづく)
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