イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第103回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。
【第1位】
企業名:龍野化成株式会社〈兵庫県皮革産業協同組合連合会〉
品 名:ミカゲ
<コメント>
「石」っぽくないですか? 硬いと思うものが柔らかかったら……。トリックアート的な感覚を意識して見た目と質感のギャップを表現してみました。
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昭和53年の龍野化成工業所として創業し、平成17年6月に龍野化成株式会社として法人化しました。創業から現代までソフトレザーを中心にお客様の要望に合わせた革の厚み、ソフト加減、風合いなど、お客様と一緒の目線に立たれたモノづくりを心がけられています。そんなモノづくり精神と技術力のもと生まれた『ミカゲ』は、まさに見た人を惹きつけ、驚かされる逸品に仕上がりました。今回、製造に携わられた上田雅也氏に制作秘話などお 話を伺うことができました。
―この素材の特徴をお聞かせください。
まず一番の特徴はこの見た目ですね。「石っぽくないですか?」という問いかけをコンセプトにしたこの革は、弊社が得意とするソフトレザーに硬い石っぽいイメージの彩色をし、硬いと思いきや柔らかいと思わせるトリックアートのような、いたずら心溢れる革素材になっています。人が見て「あれっ」と思わせることは、私たち開発者として大事な事だと心がけ、普段から面白いモノには常にアンテナを張ってアイデアに取り入れるようにしています。素材の用途としては、ベースがソフトレザーということもあり、スニーカー系の軽めの靴から、バッグや小物などの袋物、クッションなどのインテリアなど、様々な製品に汎用できます。牛革なのである程度大きなものまで対応は可能です。
―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください
この革を作ろうとして生まれたものではありませんが、この染色は吹き付けによるアンチック仕上げになります。アンチックも様々な処方があって、例えば「AとBを掛け合わせたらどうだろう?」、「CとDは?」といった感じで、様々な処方を試みていたところ、ある配色で「これ石に見えない?」 と思い、そこから微調整をしながら、さらに御影石っぽい感じに作り上げたのが、この『ミカゲ』という革素材になります。
―製作にあたって苦労したことなどありますか?
この革は染色が命なので、やはり色の付け方が一番苦労しました。開発のきっかけとなったのは偶然の産物ですが、そこからさらに石っぽくするために、色味の厳選、吹き付け方などを実際の御影石の写真を見ながら試行錯誤したり、表面の加工も何パターンか作ったりして、完成へと結びつけました。
―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?
汎用性が高いので、ファッションから雑貨まで様々な用途に使用していただけると思っていますが、私個人としてはクッションなどのインテリアに使われる と面白いのではと思っています。またビジネスチャンスとは違いますが、この革を手に取った方が「私ならこの革でこんなモノを作ってみたいな・・・」と思ってくれるのが一番嬉しいかもしれないですね。
(後編へとつづく)
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各団体・企業情報はこちらから。
兵庫県皮革産業協同組合連合会(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/hyohiren/
龍野化成株式会社 株式会社公式サイト:http://tatsuno-leather.com/