2022.12.28

【極めのいち素材】第103回 第1位 龍野化成株式会社〈兵庫県皮革産業協同組合連合会〉(後編)

イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第103回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。つづいては後編です。(前編はコチラ

【第1位】
企業名:龍野化成株式会社〈兵庫県皮革産業協同組合連合会〉
品 名:ミカゲ
<コメント>
「石」っぽくないですか? 硬いと思うものが柔らかかったら……。トリックアート的な感覚を意識して見た目と質感のギャップを表現してみました。

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昭和53年の龍野化成工業所として創業し、平成17年6月に龍野化成株式会社として法人化しました。創業から現代までソフトレザーを中心にお客様の要望に合わせた革の厚み、ソフト加減、風合いなど、お客様と一緒の目線に立たれたモノづくりを心がけられています。そんなモノづくり精神と技術力のもと生まれた『ミカゲ』は、まさに見た人を惹きつけ、驚かされる逸品に仕上がりました。今回、製造に携わられた上田雅也氏に制作秘話などお 話を伺うことができました。

―サスティナブルとの関連性など ございますか?

この『ミカゲ』に関して特にサスティナブルとの関連性があるわけではありませんが、我々が携わっている革そのものが既にサスティナブルな業界だと思っています。食肉の副産物として廃棄される皮を素材として世の中に還元している仕事なのです。とはいえ、そのことを分かっている方が少ないのが現状で、もっと一般に広めるためにも私たちタンナーも含めTLFのようなイベントを利用して、皆さんに分かっていただけるような活動が必要だと思っています。

―御社の考えるSDGsな取り組みなどございますか?

皮革業界自体がサスティナブルという話をしましたが、実際問題、皮を鞣す作業として薬剤や排水問題などは無視できない実状ではございます。弊社でも昨今の取り組みとしてSDGsに注目した素材開発も行っております。

―SDGsに注目した新商品の特徴など、言える範囲で教えてもらってもいいですか?

在市場に出回っている皮革は大きく分けて「クロム鞣し」と「タンニン鞣し」の二種類があります。クロム鞣しに関しては六価クロム化問題、タンニン鞣しに関しては森林破壊問題など、それぞれ一長一短があり、どちらが良い・悪いというわけではないのですが、弊社で開発したこの新商品は、そのどちらにも属さない特殊な手法の革になります。特徴として簡単に述べますとクロムおよび植物タンニンを使用しないので、六価クロム化や森林破壊などの問題が解決し、尚且つキメ細やかな平滑性のある吟面に仕上がります。また、クロムやタンニンは着色前にうっすらと青みや黄みがかった色をしてますが、純白からの染色なので、鮮やかな色の再現ができます。他にもクロム革より軽量でタンニン革にできないガラス革や防水革の加工にも対応しています。

―コロナ禍による影響で、何か環境が変わったことは?

コロナの影響でというわけではないのですが、以前から弊社で立ち上げているオンラインショップで革を売っており、最近では一般の方の購入者が少しづつ増えてきたかなと思います。ただ、弊社の会社名が革屋さんのイメージがつきにくい名前なので、そこは今後ブランディングなり、何か考える必要はあるかもしれないですね。

―今の皮革業界について、どのように感じられますか?

以前に比べると魅力的な職業でなくなってきているのか、職人の後継者が不足していることが大きな問題になっています。どこの業界でも同じことが起きていますが、職人の高齢化が今後の日本経済の問題として大きく取り扱われていくと思います。後継者問題に関係するかは分かりませんが、先日ある学校から工場の見学依頼がありました。昔はもっと様々な業種の工場見学などが課外授業の一環として学校が果敢に取り組んでいました。そのような活動が最近では少ないので、もっと増やせば、少しでも若者の興味の対象になるのかなと思います

―来場者の方々へメッセージをお願いします。

私たち開発業者からすると作った革をもっと皆さんの身近に感じていただけたら、これ以上ない職人冥利に尽きると思っています。今後も皮革業界が活性化するためにも、来場者の皆さんには、ぜひ、いろんな革を見て、触れて、体感して帰っていただきたいと思います。

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各団体・企業情報はこちらから。

兵庫県皮革産業協同組合連合会(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/hyohiren/
龍野化成株式会社 株式会社公式サイト:http://tatsuno-leather.com/