イマジネーションと技術が織りなす、素材(皮革と布帛)・副資材(機能性素材やパーツ)など各社渾身の一点を提案する『極めのいち素材』。第102回東京レザーフェアにて、人気投票でTOP3を獲得した企業へのインタビューを掲載します。まずは前編となります。
【第3位】
企業名:坂本商店(兵庫県皮革産業協同組合連合会)
品 名:黒桟革 型押し グリーン
<コメント>
下地を落ち着いたグリーンに染め、型押し後に黒漆を施しました。グリーンには緊張を緩和し、リラックス効果があると言われています。さりげなく存在感のある製品に仕上がると思います。(※漆には抗菌・抗ウイルス作用があり、科学的に証明されています)
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日本古来の伝統技法である「鞣し」と「漆塗り」の技術を融合させた姫路黒桟革。世界最高峰といわれるパリのファッション見本市「プルミエール・ヴィジョン」が主催するPVアワードのレザー部門で「ハンドル賞」を受賞した兵庫県姫路市の坂本商店。今回は、代表坂本弘氏のご子息が手掛けられた『黒桟革 型押しグリーン』について、同社の坂本悠氏にお話を伺いました。
―素材開発のきっかけとなった背景をお聞かせください。
現在、蔓延しているコロナの影響で、精神的にも辛いのが現状です。外出できずにストレスは溜まる一方なので、心を落ち着かせる効果のあるグリーンを採用しました。製品化になった時、グリーンのアイテムをどこか身につけていただくことで、少しでもリラックスができるようにと願って、この製品を作りました。
―この素材の特徴をお聞かせください。
鞣しは環境に配慮した日本のエコレザー認証を受けた革に、自然を連想させるグリーンで
染色し、弊社の特徴である漆を施して仕上げた革になります。あえてムラを出すことで、落ち着いた風合いと同時に高級感を醸し出しています。革自体は、弊社で開発している黒桟革「極」シリーズが元になっていますが、今回は製品名にもなっている『型押し』によるシボ感を持たせています。通常の黒桟革よりシボが細かいので、全体的に均一な風合いとムラを出すことに成功しました。また、生産ラインとしても歩留まりの良い製品になります。色の発色が特にこだわった部分になるのですが、下地の革をできるだけ白色にすることで、きれいに色が乗るようにしています。全体的には暗めの深緑に見えますが、少しテンションをかけることで、美しい発色に変化するのも特徴的です。
―製作にあたって苦労したことなどありますか?
今回、一番苦労したところは色の発色になります。色の中でもグリーンの発色は特に難しく、微妙な調整で色の出方が大きく変わったりします。最初の時は、ほとんど黒に近いグリーンになってしまったので、微調整しては作り直しという日々の繰り返しでした。納得のいくグリーンを出すまでの試行錯誤な日々は、苦労の連続でしたが、理想の色に近づけた時は、嬉しさもひとしおでした。
―実際に出来上がった素材は想像していた通りでしたか?
顔料ではなく染料を採用しているので染料独特のムラが、想定していた以上に良い感じに仕上がったと思っています。
―どのような市場がビジネスチャンスとなりますか?
弊社が製作している黒桟革は、最後に漆で仕上げるという他にはない特徴を持った革になります。そういった意味では、国内・国外に限らず様々な市場でのビジネスチャンスがあると思っております。
(後編へとつづく)
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各団体・企業情報はこちらから。
兵庫県皮革産業協同組合連合会(MEMBERページ):https://tlf.jp/member/hyohiren/
兵庫県皮革産業協同組合連合会公式サイト:https://www.hyohiren.or.jp/
坂本商店公式サイト:https://himejikurozan.net/