皮革産業は、自然界の中にある。だから正直な商売を。

皮革販売ひとすじ、70年以上の歴史を歩んできた（株）片岡商店。その強みは、特殊革に特化したラインナップにあります。爬虫類にはじまり、ゾウやダチョウ、ウナギ、エイと、その多様さは業界でも随一です。特殊革は野生生物が多いので、必然的に仕入れの難易度が高くなるもの。しかし、世代を超えて現地のクライアントとの信頼関係を築いてきた同社だからこそ、オーダーに沿った品質の革が手に入ります。特殊革に特化できるのは、長きにわたって続けてきた同社のたゆまぬ研鑽の証に他なりません。

三代目の片岡孝之氏は、皮革を扱う者として、生き物との関係に対して常に意識的です。まったく人の手が加わらなかったとしても、自然界で淘汰される生物がいる一方で、過度に守りすぎた結果、現地で害獣化してしまう例も少なくありません。また、理想的な保護を続けるためには、資金も必要になります。生態系を崩さないようバランスを取りながら、活動維持のために利益もうみ続ける。その実現には、適切な狩猟や養殖を行い、食肉としての販売を推進することで、現地民の生活を守っていく必要があります。単に資金を援助するだけでなく、その循環の中に自分たちがいることを自覚する大切さを、片岡氏は説いています。

皮革産業界全体におけるより公正な繁栄に対しても意識を向ける片岡氏。卸業を営む同社は、自分たちだけで製品化することはできず、商品が消費者に届くまでには、さまざまな分野との協業が必須です。もし、自分のエゴだけで事業を進めてしまうと、必ずどこかで苦しい思いをする人が出てしまう。そんな状況を招かぬよう、仕入れ先や全国の工房、職人、メーカーなどに、適正価格を貫き、透明性のある取引をすべきだと強調します。